2013年3月20日水曜日

海を越えた名品たち〜時代の美 中国・朝鮮編(五島美術館)


五島美術館のリニューアル記念の特別展の最後となる、時代の美 第4部 中国・朝鮮編、を訪れた。

昨年の10月から続いたシリーズの最後。感慨深げな気分で、会場に向かう。

敦煌において発見された古写経。随時代の大方等大集経と、唐時代の金剛般若波羅蜜経。書体に時代の違いが表れている。前者は、緊張感が感じられるが、後者は、大きくゆったりとした印象を受ける。

敦煌から発掘されたこうした古写経は、世界中に5万点ほどあるという。井上靖の小説や、敦煌のテレビ映像が思い浮かぶ。1,300〜1,400年前に書かれた文字を眺めていると、否応なく、歴史のロマンを感じる。

南宋、元、明時代の高僧による墨跡の数々。それぞれの筆跡は、個性的で、1つとして、似通ったものはない。

中でも、王陽明の2つの書が印象に残る。1つは、明を去る日本からの留学生に宛てて書いた書。もう一つは、ある学校の修復を記念して送った書。

王陽明の書は、あまり筆を曲げずに、直線を多く使い、シンプルでモダンな印象を与える。

南宋時代の水墨画。もともとは、足利将軍家のコレクションである東山御物であった、徽宗皇帝のものと伝わる鴨図。首を後に曲げて羽繕いをする鴨を、細かい筆使いで描いている。

牧谿が描いたと伝わる、叭々鳥図。こちらも、もとは東山御物の1つ。空を飛んでいる鳥が、降り立とうとする水草を探しているところを描いている。

足利将軍を始め、当時の有力者たちは、競って明から書や絵画を購入した。

展示場の一角には、中国の代表的な陶芸品が並んでいた。唐三彩の三彩万年壷、緑と青の色合いが美しい。白と黒のコントラストが印象的な白釉黒花牡丹文梅瓶。左右対称のシンメトリーが美しい青磁鳳凰耳瓶。景徳鎮の青花などなど。

実際に、木の葉を茶碗の中に入れて焼いた、黒釉木の葉文椀。葉の葉脈がくっきりと茶碗の底に表れている。

第2室には、朝鮮の美術品が展示されていた。

日本は、法華経の国だが、韓国は華厳経の国だ。高麗時代の高麗版 貞元新訳華厳経疏。その文字の一つ一つを、実に丁寧に書いていることがよくわかる。この経典への思いが、伝わってくる。

朝鮮といえば、やはり陶芸。青磁、白磁などの名品が並ぶ。

松江藩主、松平不味が所有していた井戸茶碗、美濃という銘を持っている。一見すると、何ということのない井戸茶碗のように見えるが、よくよくみると、上薬の微妙なピンクを帯びた色合いが、複雑な文様のように、器を取り巻いている。

会場を後にしながら、ひょんなことから、海を越えて、この国に腰を落ち着けた、美しい品々の不思議な縁について、考えざるを得なかった。

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