2013年3月3日日曜日

新井淳一の布 伝統と創生(東京オペラシティーアートギャラリー)


寡聞にも新井淳一の名を知らなかった。

東京オペラシティーアートギャラリーで開催された、新井淳一の布 伝統と創生、という展覧会で、新井の革新的な作品を目の当りにすることが出来た。

新井は、1932年に、織物で有名な、群馬県の桐生市で生まれ、伝統的な布作りを行う一方で、新しい素材を使った布作りにも取り組み、三宅一生や川久保玲らのデザイナーとの協業などによって、世界的に名前を知られるようになった。

会場は、大きく3つのGalleryに別れていた。

最初のGalleryは、自己組織化。ウールやナイロンの他、アクリル、ポリエステル、アルミニウムなどの様々な素材を使い、カラフルで多彩な触感をもった新井の布が、会場一杯に並べられている。

周りの壁には、各種の製法の解説があり、サンプルを触ってその感触を自ら確かめることができるようになっている。

2番目のGalleryは、精神と祈り。まず、渦巻き上に垂れ下がった布の間を、抜けていく。すると、その向こうに、高い天井から吊るされた、様々な布素材が表れてくる。

1枚1枚の布は、素材も、色合いも、表面に表れているイメージも、みな異なっており、これまで、見たこともないような不思議な空間が広がっている。

一番奥の壁一面には、大きな布が貼付けられている。近くによって見ると、布は細かいシワがあり、所々が盛り上がり、山のようになっている。まるで、別な星の表面を、宇宙船から眺めているような、奇妙な錯覚に襲われた。

そして、最後のGalleryは、創生の火種。新井が世界各地で撮影した写真のスライドが、展示会場の床いっぱいに写されている。来場者は、そのスライドの上を歩きながら、出口に向かう。

新井は、世界中の様々な民俗の工芸品や、風景、人々の身にまとっているものなどから、実に多くのインスピレーションを得ていたようだ。

布という素材だけを使って、これほど印象の深い展覧会を構成できるとは、夢にも思わなかった。

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