年が開け、間もなく、両国の江戸東京博物館を訪れた。
名古屋の徳川美術館所蔵の、国宝を始めとする徳川家の至宝の数々が展示され、正月に相応しい華やかなものだった。
江戸時代、日本を支配した徳川家は、まさに当時のセレブの頂点にいた。この展覧会では、その江戸時代のセレブの生活を、垣間見ることができた。
展示会場に入り、まず目に飛び込んできたのは、刀剣だった。
徳川家は、何よりも日本を武力で統一した武士の長であった。刀は武士の象徴。国宗、正宗、村正、といった名だたる名刀が、見るものを圧倒する。
そうした名刀は、鎌倉時代に作られたもの。一部、歯が欠けたものがあり、何度か戦場で実際に使われたようだが、キレイに磨がれたその刀は、今でも十分、現役として使えそうだ。
しかし、その後の展示からは、そうした血なまぐささは一層され、一気に豪華なセレブ生活に突入していく。その展示内容のギャップが、興味深かった。
藤原定家、藤原行成、一休宗純らの書。南宋時代の油滴天目、黄天目茶碗。信長や秀吉も使っていた茶器。古田織部の茶杓、などなど。
それらの茶道具の所持は、徳川家の権威の象徴だった。一休宗純は、自らの死後、よもや自分の書が、そうした目的で飾られるとは、思いもよらなかったに違いない。
続いては、能に関する展示。世阿弥の書物にも登場する、越智吉舟による翁、痩女の能面や色鮮やかな能装束の数々が並んでいた。
能は、室町時代に普及したが、江戸時代には、公式行事で必ず演じられる演劇となった。
この展覧会の目玉は、源氏物語絵巻と初音の調度、という2つの国宝。
源氏物語絵巻は、柏木の帖。光源氏が、正妻の女三宮と柏木の不義の子、薫を、その秘密を知りながら、自分の子として抱いている場面。
初音の調度は、3代将軍家光の娘、千代姫が尾張徳川家に嫁いだ時の。細かい彫刻、金箔をまき散らしたその品々は、まさに徳川家の至宝。
将軍自身も、書や水墨画を習っていた。徳川家康が描いたといわれる、小さな恵比寿様の絵。まるで、子供の描いた絵のように、微笑ましい。
鎌倉時代に始まった武士の時代は、この江戸時代の徳川家の支配によって、その頂点に達し、やがて訪れた近代化の流れの中で、終わりをつげた。
徳川美術館に伝わる、その豪華な名品、工芸品の数々は、その栄光を今日に伝えている。
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