2013年1月20日日曜日

円空の作り上げた宗教世界〜特別展 飛騨の円空


円空の木彫りの仏像は、一度見たら、二度と忘れることができない、強烈な印象を残す。

円空の彫った仏像は、全国におよそ5,000体が確認されているというが、東京国立博物館で行われた特別展では、そのうち、円空に縁の飛騨の千光寺とその周辺に伝わる仏像、およそ100体程が展示された。

会場で、一際目を引いたのは、中央に展示されていた、金剛力士立像。立ち木にそのまま彫刻したと伝わり、2メートルを越える。

円空は、通常、丸い木を真ん中で二つに割って、丸い方を彫るので、こうした彫り方は珍しい。

顔だちは目、鼻、口が彫られているが、それ以外の体の部分は、ほとんど彫られていない。まるで、木の中から、仁王像が立ち上がってくるかのような、ダイナミックな彫像になっている。

三十三観音立像。60〜80センチ程の観音が31体で構成されている。体の線をシンプルに彫っただけの像。まゆげも目も、それぞれ一本の線で彫っただけ。

千光寺に収められ、住民が病いになった時などに、家に1体持ち帰り、回復を祈ったという。円空は、訪れた土地で、地元の人々の願いに応じて、仏像や神像を彫った。

千手観音菩薩立像。千本とまでは行かないが、50本程の手が別に彫られて組み合わされた、円空には珍しく、複雑な構造の立像。その表情は、最低限の線で彫られ、やさしく微笑んでいる。

柿本人麻呂像。仏でも神でもない。形も、円空特有の立像ではなく、座って頭を右手にもたげている。左右対称ではない、その形が、深い印象を残す。

円空は、12,000体の彫像を彫ることを発願したという。現在、そのうち、5000体ほどが見つかっている。円空は、自らの発願を実現したのだろうか?

今日、私たちは、円空のそうした彫像を、芸術作品として鑑賞する。無論、円空は、そのような意図で作ったのではないだろう。

しかし、円空の彫像に取り囲まれていると、円空が、その木の中から呼び出したものが、私たちを不思議な感覚に陥いらせる。それは、幾多の教典に劣らず、私たちを、精神的な世界に誘う。

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