2013年1月1日火曜日

作品だけで評価されるべき画家〜山下清展


日本橋三越で開催された、山下清の生誕90周年を記念する展覧会を見た。

山下清というと、その作品よりも、ドラマによって作られたキャラクターがまず思い浮かんでしまう。

幼き頃に描かれた昆虫の絵。決して上手とはいえないが、物事をみつめ、それを絵にするという画家としての本能が、そこには表れている。

山下の大きな特徴は、その作品の多くが、貼絵という形式で作られている点だ。

しかも、文字通り線のように細かく切られた紙片を、丹念に貼付けている作品を目にすると、山下清という作家の、尋常ではない、その迫力に圧倒される。

あまりにも細かいので、作品を見ただけでは、それが貼り絵と気づくのに、相当の時間を要する。場合によっては、貼り絵とは気がつかないかもしれない。

その代表作といえる、長岡の花火、は、一度見たら、二度と忘れられないほどの印象を残す作品だ。

花火の火の粉は勿論、無数いる群衆の表情までも、その細かい紙片で表現されている。これはまさに、神業だ。

筆先の太い、フェルトペンで描かれた、東海道五十三次。

太い線と点だけで、街道筋にある町、神社、寺、山や田などの風景が、忠実に描かれている。山下清の、画家としての、純粋に物を描くということの本性が、そこには表れている。

会場には、全国を放浪する山下清の様子、それを伝える海外を含めた雑誌なども合わせて展示されていた。

これからも、しばらくは、そうした作品以外の側面も、彼の周囲には付いて回るだろう。

山下清が、その作品だけで評価される時代が訪れることを、切に願いながら、会場を後にした。

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