会場に足を踏み入れたとたん、スタジオ・ムンバイの設計事務所そのものを訪れたのでは?という錯覚に捉われる。上手な演出だ。
壁の周りには、これまでの作品や、その建築風景の写真が飾られいる。その前には、作品の模型と、実際に使われたデザインノートや建築機材なども、整然と置かれている。
3階のテラスにも、建築資材や、作品の一部が展示されている。
スタジオ・ムンバイは、アメリカで建築を学んだビジョイ・ジェインが、1995年、30才の時にインドに帰国してスタートした建築集団で、地元の建築職人たちとのネットワークを通じて、設計から施行まで一貫して行っている。
建物が建てられる場所の自然的なあるいは人間的な側面を受け入れ、地元の素材を活用したり、石工などの職人も、設計の段階から意見を出し合うという、そのユニークな方法で、最近、世界中から注目されている。
4階に上がると、よりスタジオらしい雰囲気が再現されている。ビジョイ・ジェインのデスクが再現されている。
インドのヒマラヤも麓、2300メートルの高原に建てられた、レティ360リゾート。地元の石材を使い、その建物は、完全に自然に溶け込んでいる。
4階の会場の真ん中に、塗料や木材などが、建築現場さながらに置かれている。スタジオ・ムンバイは、ビジェイはアメリカで学んだこともあって、こうしたプレゼンテーションが実に巧みだ。
現在、進行中のプロジェクト。ムンバイに建設中の、サート・ラスタ 561/63の初期模型。
インド、マハラシュートラ州、チョンディのコッパー・ハウスII。モンスーンで床下浸水を意識して、高床式になっている。
普通、有名な建築家の作品は、どこに建てられていようとも、一目で誰の作品かわかることが多い。自分のスタイルを持って、それをどの場所にも当てはめようとするからだ。
しかし、スタジオ・ムンバイの作品を見ていると、そうしたパターンを見つけることが難しい。それは、その建築が、完全にそれが建つ土地や風土に合わせて、作られているからだ。
どうして、今世界中が、スタジオ・ムンバイに注目しているのか、その理由が、よくわかった気がした。
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