2012年9月23日日曜日

平家物語の世界を扇絵で楽しむ

ちょうど、平家物語を読んでいる時に、タイムリーなことに、根津美術館で、平家物語画帖展、が開催された。


この画帖は、江戸時代に作成された物で、作者や作成した工房は特定されていない。根津美術館以外にも、同様の画帖を保管している美術館もあることから、ある時期に集中して作成されたのかもしれない。

平家物語の主要な120の場面について、右側に文章を、左側に扇の形の中に、その場面を描くという構成。

一度では、120すべての内容を展示することが難しいため、前期・後期の2回に分けて、展示されていた。

この画帖以外にも、鎌倉時代の源平盛衰記の断片や、江戸時代の平家琵琶など、関連する品々も、展示されていた。

さて、平家物語画帖だが、120場面というと、この物語のほとんど主要な部分がカバーされている。

平家の祖父の平忠盛が、殿上を許された時に、闇討ちにあったエピソードや、鳥羽上皇の愛人だった父の忠度の妻の話にはじまり、鹿ケ谷の陰謀のシーン、そして、木曾義仲の最後、壇ノ浦の戦いなど、この物語を読んだことがない人間でも、よく知るようなエピソードが、小さな扇絵の世界の中で展開されている。

扇の大きさは、縦10センチ、横は25センチくらいだろうか。その小さな空間の中に、1つのエピソードが、細い筆を使って、色鮮やかに、描かれている。

扇の形は、湾曲しているが、その湾曲を上手に使い、小さい得ながら、左右の空間的な広がりを表現する技術は見事。

普通の左右の伸びているだけの空間では表現できない部分が描かれているので、それが、扇絵独特の絵画世界を可能にしている。

平家と源氏の戦いの中で展開される、様々な人間模様を、この国の人々は、文章と絵画を使い、時代ごとの特徴を付け加えながら、1000年近くにわたり、味わってきたのだなあ、という思いを強くした。

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