2012年5月2日水曜日

汲めども尽きぬ北斎の泉〜ホノルル美術館所蔵北斎展より


三井記念美術館で開催されていた『ホノルル美術館所蔵 北斎展』を見た。

有名な富嶽三十六景の赤富士や神奈川沖波裏から、あまり知られていない作品まで、北斎の多彩な作品が展示され、とても楽しめた。

ヨーロッパの遠近法の手法を使って描かれた浮絵。『東叡山中堂の図』、『浦島竜宮入の図』の2つの絵が展示されていた。新しい手法を取り入れるその柔軟性、完璧に使いこなす技術の高さが見て取れる。

『僧正遍昭』。そのひらがなの文字を絵に取り入れて、見事に人物像を描いている。北斎のユーモア感覚がいかんなく発揮された作品だ。

最晩年に描いた『地方測量図』。その名の通り、海を望む丘陵地で、測量チームがあちらこちらで、測量器具を使いながら測量を行っている。どういう経緯でこの絵が描かれたのかはわからないが、どんな注文でもこなしてしまう、北斎の絵の職人としての幅の広さが窺える。

百人一首の歌にちなんだシリーズ物の浮世絵の一枚。海女たちが海で泳いでいる図。水面の上に出ている顔や手や足だけ描いている。あとの部分は波の下で見えない。しかし、まるで、切断された顔や手足が波の上にプカプカと浮いているように見える。まるで、シュールレアリズムの作品のようだ。

北斎の絵には、実に多くの人間が描かれている。そのほとんどは、一般の庶民だ。彼らが、実に生き生きとした表情をしている。北斎の生きた時代は、幕末の時代。大変な時代だったように思えるが、意外と、庶民はその中でも、たくましく、毎日を楽しく過ごしていく、そんな知恵を身につけていたのかもしれない。

北斎の絵には、いつ見ても新しい発見がある。その意味では、北斎は、汲めども尽きぬ泉のようだ。

三井記念美術館のホーメページ

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