2012年5月5日土曜日

古代ヨーロッパへの時間旅行〜ユベール・ロベール 時間の庭展より


上野の国立西洋美術館で開催されていた『ユベール・ロベール 時間の庭』展を見た。

フランス、ローヌ=アルプ地方にある、ヴァランス美術館の収蔵品を中心にした展覧会で、ユベール・ロベールの他、クロード・ロラン、フランソワ・プーシェ、ジャン=オノレ・フラゴナールらのロココの作家たちの作品で構成されていた。

ユベール・ロベールは、1773年にフランスの公爵の侍従の子として生まれ、公爵がイタリアに大使となって赴任したさいに同行し、その地で11年を過ごし、ローマの遺跡や、ルネサンスの庭園などを巡り、そこで多くのデッサンを描いた。

フランスに帰国後は、王立アカデミーに所属し、イタリア赴任時代に描いたローマの廃墟や庭園を描く画家として、名を知れれた。

ロベールが描いた当時のローマの風景を見ると、現在のものとはまるで違っている。ローマは、文字通り廃墟のようで、遺跡の周りはそれこそ、草が茫々。民衆の様子も、決して豊かなようには見えず、足は裸足だ。

ロベールの特徴は、ローマの凱旋門や、サン・ピエトロ広場のような壮大な風景を描く際にも、その中に人々の姿を描いていることだ。貴族風な人もいれば、貧しい民衆の姿も見られる。それが、ロベールの絵に、とても優しく、柔らかい印象を与えている。

「サン・ピエトロ広場の列柱」。画面の中央に、列柱の一本が大きく描かれている。大胆な構図だ。日本の浮世絵のようなその構図だが、まだヨーロッパには紹介されていない時代。ヨーロッパにも、こうした構図の伝統があったことが、この絵から読み取れる。

ジャン=オノレ・フラゴナールの「丘を下る羊の群れ」。フラゴナールは、ロベールと同じ時期にイタリアを訪れ、同じ屋敷に滞在し、交遊もあったという。この作品は、フラゴナールらしい、繊細にして鮮やかな筆さばきで、農村の牧歌的な風景を見事に切り取っている。

フランソワ・プーシェの「石橋のある風景」と「水車のある風景」。セットで描かれたと思われる作品。構図も、左右合わせてみように構想されており、続き絵のようにも見える。こちらも、プーシェの細かい筆使いに見とれてしまう。画面のあちらこちらに飛んでいる白い鳥が、ほぼワンタッチの筆使いで描かれている。

また、同時に、18世紀を代表するイタリアの版画家、ジョバンニ・バッティスタ・ピラネージによる版画の連作『牢獄』の展示も行われていた。

まるで、スピルバーグのインディ・ジョーンズ・シリーズの1場面に登場するような、ダイナミックで壮大な、牢獄の内部の様子が、エッチングの細かい線によって描かれていて、印象に残る連作だった。

国立西洋美術館のホームページ

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