汐留ミュージアムで開催された、『ジョルジュ・ルオー 名画の謎』展を見た。
ルオーがギュスターブ・モローの元で学んでいた時代の作品から、『ミセレーレ』に代表される銅版画、サーカスの作品群、宗教画、静物画など、晩年の作品にいたるまで、ルオーの全体像を概観できる、貴重な展覧会だった。
「人物のいる風景」。モローの元で学んでいた20代の頃の作品。後年のルオーとは全く違った、モローの絵画のような幻想的な風景画。三日月の夜、暗い森、池の中で数人の人物が、祈りを捧げているように見える。神秘的で、印象的な作品。
1920年代後半から30年代にかけて描かれた聖書を題材とした小さな風景画群。キリストと弟子風の人物が、青を基調とした風景の中に描かれている。いずれも、シンプルな色と線で描かれている。余計なものすべてを削ぎ落しながら、しかも、全てが描かれているような、ルオー独特の世界観が展開されている。
ルオーの人物画というと、太い線で輪郭された顔の絵が思い浮かぶが、サーカスの人々を描いた作品やユビュ王の銅版画では、異様に長く、しかも不釣り合いな手の描写が見られ、面白かった。
モローの元で学ぶ画家たちの集合写真があった。ルオーは、最前列のしかもど真ん中で、彼らのリーダー的な存在として映っていた。マチスもまたモローの元で学んでいたが、マチスは写真の左奥の方で、あのディレッタントな雰囲気で、斜めにポーズを取っている。
ルオーは、モローの死後、遺言によりモロー美術館の初代の館長に就任したという。モローとルオーの関係を物語っているエピソードだ。
会場の所々に、ルオーの作品をわかりやすく解説するコーナーがあった。それらは、子供向けに作られたもののようだったが、私が訪れていた際に、子供は一人もいず、すべて大人の来場者であった。
おそらくは、親子で美術館を訪れてほしい、という美術館の意図によるものだろう。しかし、せっかく、世界で唯一の、ルオーの名前を冠する美術館なのだから、大人をも満足させるような、より専門的な解説があってもいいのではないか、と感じた。
汐留ミュージアムの『ジョルジュ・ルオー 名画の謎』展のページ
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