上野の国立科学博物館で開催されていた、『マチュピチュ「発見」100年 インカ帝国展』を見た。
様々なメディアで紹介されていたせいか、平日にも関わらず、会場には多くの人が訪れ、1部の展示品の前には、多くの人だかりができていた。
インカ帝国の実像は、実は良くわかっていない。インカの人々は、文字を使っていなかったし、現代人が考えるような歴史という考え方を持っていなかったようで、その”歴史”は、征服したスペイン人の記録によるという。まさに、謎の帝国だ。
展示品は、儀礼用の器具、衣類品、ミイラ、生活用具などなど。
リャマの形をした石製儀礼用容器。リャマの姿を抽象化して表現しており、現代的なデザイン。他の展示品とは、全く違った存在感を持っていた。
インカでは、トウモロコシが主な産物で、食用というよりは、そこから酒を造るのが、おもな使い方だったようだ。トウモロコシを象った、酒器などが展示されていた。
インカ帝国は、その領土を貫く広大な道を作った。スペイン人によれば、その道は規模においても、その用途においても、ローマの道を凌ぐという。
その道を通じてやりとりされたのが、キープと呼ばれる縄の結び目を使った記録装置。主に数字などを表し、これで、帝国の各地に様々な情報を伝達した。
若い女性のミイラ。死後、ミイラにされたのだが、まるで、顔を覆って叫び声を上げているかのような姿勢でミイラになっている。ムンクの「叫び」を連想させる。
器に描かれている、動物や植物などの模様。そのいくつかは、ナスカの地上絵の模様ととても似通っていた。
帝国としてのインカは滅んでしまった。現代の歴史家たちは、スペイン人たちが残した記録や、考古学的な資料に基づいて、その真の姿を解明しようとしている。会場には、そうした成果が、非常にわかりやすく説明されていた。
しかし、そのような現代的な視点で再現したインカ帝国は、本当のインカ帝国の姿なのだろうか?幻のままのインカ帝国の方が、本当の姿なのかもしれない。
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