2012年5月3日木曜日

岩崎財閥が誇る珠玉の日本絵画を味わう〜東洋絵画の精華展より


静嘉堂文庫美術館で開催されていた、『東洋絵画の精華 珠玉の日本絵画コレクション』展を見た。

この展覧会の目玉は、『平治物語絵巻 信西巻』。時期を同じくして、ボストン美術館の『三条殿夜討巻』が国立博物館で展示されていることから、それとのタイアップ企画として、静嘉堂文庫美術館でも、この絵巻が展示された。

私が訪れた際は、三段ある絵巻のうち、第二段の、信西が切腹し、その首が信頼・義朝側によって、都に持ち帰られるまでを描いている。

絵巻は、会場を入ったすぐのところに展示されていた。美術館の場所は、世田谷区の奥まったところにあるため、訪れる人も少ない。ゆっくりと、13世紀の貴重な絵巻を目にすることができた。

まずは、信西が伊勢の山中で、もはや逃げられないと観念し、切腹して果てる場面。それを従者が敵に見つからぬように土に埋めている。切腹で腹部が朱に染まっている。その朱の色が、今でも色鮮やかであることに驚く。

続いて、従者が埋めたにもかかわらず、信西の死骸が、信頼・義朝側によって発見される場面。ちょうど、首を切り取っている場面。実に、生々しい。

最後は、その首が、槍の先に括り付けられ、都に運ばれている場面。乱を起こした藤原信頼が、牛車から上半身をのぞかせて、その首を実検している。周囲には、多くの武士が描かれているが、一人一人の表情やポーズが描き分けられていて、この絵巻の質の高さを感じさせる。

会場には、それ以外にも、静嘉堂文庫美術館が所蔵する、鎌倉から江戸時代にかけての美術品が展示されていた。

『四条河原遊楽図屏風』。17世紀に描かれた、京都の鴨川の四条あたりの祭りの屏風絵。踊りを踊ったり、珍しい動物の見せ物を見たり、弓矢の的を射る遊びなどをしている風俗画。そのひとつひとつの場面が、克明に描かれていて、じっくりと、目を近づけて見ていると、時間がたつのを忘れてしまう。

鈴木其一の『雨中桜花紅楓図』。桜の抑えた色合いと、紅楓の朱色の対比が、ただただ美しい。

酒井抱一の『波図屏風』。精密な画風で知られる抱一だが、簡潔でダイナミックな波の表現が印象的だった。

まさに、珠玉の日本絵画を満喫した時間だった。さすが、岩崎財閥の財力を誇示するような内容の展覧会であった。

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