東京、六本木にある泉屋博古館で開催された、新春展 吉兆のかたちを訪れた。
展示は、古代中国の青銅器と、新年に相応しい花鳥風月を描いた近世、近代の日本絵画で構成されていた。
青銅器コレクションといえば、根津美術館のものが有名だが、この住友コレクションのものも、なかなかのものだった。
古代中国の青銅器には、不思議な動物の文様が描かれている。中でも、饕餮、という牛あるいは羊や虎、人などが組み合わされた想像上の生き物は、とりわけ深い印象を残す。
青銅器の四隅の橋に、大きな二つの目と角が描かれている。その文様の細かさ、複雑さに、思わずガラスすれすれに目を近づけてしまう。そして、顔の周りには、渦巻き模様が細かい線で彫られている。
もし、1つでもそうした青銅器を所有していたら、一日眺めていても、飽きることなく、見るたびに、新しい発見があるに違いない。
饕餮が描かれた青銅器は、商や周という、秦による中国統一以前の古代国家の遺跡から、多く出土されている。
器に描かれいるのは、魔除けの意味があったというが、どうして酒や食べ物を入れる器に、魔除けが必要なのか、よくわからない。食べ物がおいしくなるようにとか、毒が入らないように、などの意味があるのだろうか。
同じ、商や周の時代の青銅器には、竜も描かれている。竜は、その後、統一中国の皇帝を象徴する存在となった。しかし、この時代の青銅器を見ていると、饕餮の方が圧倒的な存在感を誇っている。
どうして、饕餮でなく、竜が皇帝の象徴になったのかは、興味深いテーマだ。
戦国、春秋時代になると、青銅器の文様は、一気にシンプルな物に変わってくる。明らかに、人々の意識が変わったことを表している。合理的な考えを持つようになったのだろう。
現代でも、再現することが困難なほどの複雑な文様の青銅器を作っていた時代の人々の創造力は、失われてしまったのだろうか?
ガラスの向こうに並べられている奇跡の青銅器たちは、何も言わず、その精巧な文様を、これでもかと、こちらに見せつけていた。
0 件のコメント:
コメントを投稿