五島美術館のリニューアルを記念する、その主要な収蔵品の特別展。第2弾は、鎌倉・室町編。
鎌倉時代になると、宋からもたらされた禅文化が、日本を覆い始める。
一休宗純の筆による梅画賛。梅の花が咲き、冬の終わりを知る、という意味の賛が書かれている。三千世界の氷が溶ける、という表現があり、単なる季節的な冬の訪れではないことを案じさせる。
鎮護国家の道具と成り果ててしまった日本の仏教に対して、個人と世界の直接の関係を取り戻そうとした禅は、その後の日本文化に、決定的な影響を与えた。
そのことが、この一休の一枚の掛け軸からだけでも、伺える。
鎌倉には、宋から多くの禅僧が来日し、鎌倉幕府の指導者たちは、建長寺、円覚寺などを建て、そこにそうした高僧を招いた。
円覚寺の開山となった無学祖元もその一人。その書は、やはり日本人の描く書とはひと味違う。
日本にやってきた多くの禅僧たちは、禅という宗教だけをもたらしたのではなく、宋の最新の文化芸術をも、当時の日本にもたらした。
後に一休が修行することになる、大徳寺を開いた宗峰妙超による墨跡、梅渓。大きな字で、梅と渓、という二つの文字が書かれている。
字の持っている力強さに、思わずその前で足が止まる。
文字を書かなくなってしまった現代人に、文字の持つ不思議な力、を見せつけている。
藤原定家が、その独特な書体を生み出す直前の書。本人は、反古(ボツ)にした書状が、なぜか今日まで伝わり、こうした展覧会でうやうやしく展示されることになってしまった。
定家は、どこかで、苦笑しているかもしれない。
もうひとつの定家の書は、晩年の小倉色紙に書かれた和歌。
あひみてののちのこころにくらふれは むかしはものもおもはさりけり
の、む、け、という3つの文字が、例えようもなく、ただただ美しい。
時代が大きく変わった、鎌倉・室町時代。その時代の人々の残したものは、今も、私の心を揺さぶる大きな力を持っている。
0 件のコメント:
コメントを投稿