美術・芸術関連の展覧会に行った時の感想をアップします。もし興味があったら、ご覧ください。My comments to the art exhibitions in Japan.
2012年10月14日日曜日
イジスの撮影した世界
日本橋三越で開催された、イジス写真展―パリに見た夢―、を見た。パリで2010年に開催された大回顧展の巡回展。
寡聞にも、イジスというこの写真家のことは知らなかった。ロベール・ドアノー、アンリ・カルティエ=ブレッソンのことは知っていたが、彼らと同じ世代だという。
イジスは、1911年にリトアニアで生まれ、20代に画家を目指してパリに来て、その後写真家になり、第2時世界大戦後、フランス国籍を取得した。
狭い、日本橋三越の新館7階ギャラリーに、たくさんの特設の壁が作られ、そうした壁という壁に、イジスの写真が飾られていた。
イジスが写真家になるきっかけにもなった、1944年に撮影した、レジスタンスの兵士の写真。無名の人々が、イジスの写真の中では、ヒーローになっている。
戦後間もない1940年代後半のパリは、まだ貧しかった。今ではオシャレの代名詞でもあるセーヌ川のほとりには、浮浪者が寝そべっていた。
足が悪くなり、歩けなくなった有名な作家コレットのために、イジスが撮影した様々な風景写真。風景自体は、決してなんということはないが、そこには、世界の秘密が隠されているような、神秘的な雰囲気が漂っている。
1952−53年に撮影されたロンドンの写真。そこには、それまで、誰も見たことがない、ロンドンの風景が、映されている。
イジスは、同じユダヤ人ということもあり、同じく若くしてパリに来たシャガールとは友人だった。そのシャガールが、パリのオペラ座の天井画を描く様子が、イジスによって撮影されていた。それは、貴重な歴史の記録だ。
サーカスの写真。サーカス団の人々の練習風景、化粧をするピエロ、象などの動物達、そして、サーカスを見て歓喜する人々の顔。イジスの写真には、サーカスの全てが映されていた。
この日から、私にとって、イジスという写真家は、忘れられない存在となった。
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