2012年11月11日日曜日

「間」と「メリハリ」の琳派芸術


日比谷の出光美術館で、琳派芸術Ⅱ、という展覧会が開催された。

これは、2011年3月に開催中だった展覧会と同じ名前だが、東日本大震災のため途中で中止され、構成を少し変えて、再び開催したもの。震災の影響は、こんなところにも及んでいた。

会場の入り口付近に展示されていた、酒井抱一の風神雷神図屏風。俵屋宗達、尾形光琳のものとは、少し趣を変え、やや軽めに描た風神雷神図。

しかし、この3人に共通するのは、独特な空間感覚、いわゆる”間”。日本の芸術一般に共通するこの”間”の感覚を、琳派の作品では、より強く感じる。

左右に分かれた風神と雷神を微妙な距離に分ける間、そして、両者は横一線ではなく、かすかに上と下にずれて配置されている。

酒井抱一の八ツ橋図屏風。こちらも尾形光琳の作品を元にしている。この作品では、橋の両側に菖蒲の花が連なって咲いているが、ところどころに、何もない空間が配置されている。その微妙な間こそが、この作品に独特なリズムを与えている。

伝統的な西洋の絵画では、絵の中に何の色も置かれていない空間などありえない。それは、神の作ったこの世界が完璧でないことを意味し、神への冒涜となる。

仏教においては、色即是空、この世のすべてのものは、すべて幻。恒久的なものは存在しない。仏教思想に影響を受けた中国や日本の絵画では、描かれる風景は、客観的なものではなく、すべて主観的なもの。自分の心に見えるものしか描かない。

琳派の作品には、そうした感覚が、より強く現れている。

酒井抱一の紅白梅図屏風。そこでは、不自然な形に折れ曲がった梅の木が、墨の線で描かれているが、それは、梅の枝を描いているというよりは、墨の筆使いの跡そのものを、表現したかったようにも見える。

酒井抱一の十二ヶ月花鳥図貼付屏風。十二枚の屏風絵に、梅や紅葉、鶯など、各月を代表する植物と鳥などが描かれている。同じ屏風の中に、木自体はざっくりと墨だけで抽象的に描きながら、そこに咲いた花は、おしべやめしべまで、細かい筆使いで丹念に描かれている。

その描き分けの感覚が素晴らしい。まさしく、「メリハリ」を効かせた表現も、琳派の大きな特徴の一つだ。

その他にも、尾形乾山の美しい色絵の各皿や、鈴木其一の素晴らしい雪を描いた雪中竹梅小禽図などもあり、江戸琳派の作品を中心にしたそれらの展示品から、琳派芸術の神髄を味わうことが出来る展覧会だった。

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