2012年4月21日土曜日

日本の型紙がヨーロッパのデザインを変えた〜KATAGAMI style展より

三菱一号館美術館で開催されていた『KATAGAMI styleー世界が恋した日本のデザイン展』を見た。

19世紀の後半以降、海を渡った日本の型紙が、どのように当時のヨーロッパに影響したのかを展望する、画期的にして、非常に興味深い内容の展示会だった。

まず、18世紀以降の日本の型紙の職人芸の細かさに圧倒された。文字通り、針の先で開けられたような小さな点を使い、植物の葉などの自然の形が、絶妙の、美しいバランスで描かれている。

まさに、1つのミスや失敗は許されない。その驚くべき技術と、忍耐力には、ただただ、驚かされるばかりだった。

そうした型紙は、江戸時代の庶民の衣装の地にプリントされた。会場には、型紙によって作られた小袖などの衣装が展示されていた。また、そうした衣装が描かれた、浮世絵の数々も展示されていた。

型紙は、19世紀の後半以降にヨーロッパで開催された万国博覧会で紹介され、ヨーロッパ人を魅了した。その後、短期間の間に、驚くべき数の使用後の型紙が、日本からヨーロッパに売られ、海を渡っていった。

それを最初に取り入れたのは、ウィリアム・モリスらに代表される、アーツ・アンド・クラフツ運動の作家たちだった。会場には、リバティー紹介のテキスタイルが多数、展示されていたが、日本の型紙による影響は一目瞭然だった。

それは、やがて、ドーバー海峡を超えて、ヨーロッパ大陸に広まっていった。フランスのアールヌーボー、エミール・ガレのガラス作品、ミュシャのポスター、モーリス・ドニの平面的な絵画作品などなど。

目の前に、日本の型紙と、そうしたこれまで日本人に馴染みのあった有名な作家たちの作品が並べられ、いかに、日本の型紙がヨーロッパのデザイン環境を変えたかが、言葉でなく、作品そのもので証明される。

影響はフランスに留まらない、ドイツのユーゲントシュティル、ヨーゼフ・ホフマンのウィーンの工房、その他にも、オランダ、ベルギーなどへも影響は続いた。

単に美しい物を並べるだけでなく、また文章で語るのではなく、作品を並べ、その関係性を明確に提示し、鑑賞者に新たな発見を促す。

この展覧会は、これまで見た数多くの展覧会の中でも、とりわけ深く心に印象が残る、忘れがたい展覧会であった。

三菱一号館美術館のKATAGAMI styleー世界が恋した日本のデザイン展の特設ページ

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