美術・芸術関連の展覧会に行った時の感想をアップします。もし興味があったら、ご覧ください。My comments to the art exhibitions in Japan.
2012年4月29日日曜日
曾我蕭白を浴びる〜蕭白ショック!! 曾我蕭白と京の画家たち展から
千葉市美術館で開催されていた『蕭白ショック!! 曾我蕭白と京の画家たち』展を見た。
曾我蕭白の主要な代表作が揃った、本格的な内容の、充実した展覧会であった。
蕭白というと、その個性的な人物表現、自然の描写などから、同時代の画家たちとは、全く独立した存在のように思われがちだが、この展覧会では、蕭白を当時の環境の中に位置付ける試みが、展示内容からも工夫されていた。
最初のコーナーでは、山口雪渓、五十嵐浚明、高田敬輔など、蕭白の画風と共通する、蕭白以前の画家の作品が紹介されていた。
蕭白は、当時は中国画家の技法を使う画家の一人と考えられていたようだ。蕭白の山水画には、確かに、雪舟の影響が読み取れる。その個性的な人物表現も、中国の影響が読み取れる。
また、最後のコーナーでは、蕭白と同時代の京都の画家たちの絵画も紹介されていた。伊藤若冲、池大雅、蕪村、円山応挙、そして長沢蘆雪。それは、まるで当時の京都の絵画空間が、現代に蘇ったかのようだった。
『柳下鬼女図屏風』。その表情がグロテスクで、一度見たら決して忘れられない、蕭白の代表作。近づいてよく見ると、顔の中央部分は、剥落しているようだ。しかし、その剥落が、その鬼女の表情を、さらにグロテスクにしている。
『定家・寂蓮・西行図屏風』。いずれも名だたる歌人だが、蕭白にかかると、単なる変なおじさんとしてしか描かれていない。西行に至っては、わらじのひもを結わえている場面が描かれているので、笠で隠れていて、顔自体が描かれていない。
今回、蕭白の絵を見て感じたのだが、蕭白は、手先の描き方に特徴がある。『柳下鬼女図屏風』の鬼女は、左手の指先で天を指しているのが、その表現は、ちょうどレオナルド・ダ・ヴィンチの聖ヨハネの指先の丁度逆になっている。
『瀟湘八景図屏風』のような蕭白の山水画を見ていると、そこでは、人物画に見られる個性的な表現は息をひそめ、まるで雪舟のような、静かさに溢れた自然の心象風景が展開される。
蕭白という大きな世界の中で描かれた様々な絵画を目にしながら、当時の京都という場所に存在した、多様にして華麗な芸術空間の中に、とっぷりと浸かった時間を過ごした気分だった。
千葉市美術館の『蕭白ショック!! 曾我蕭白と京の画家たち』展のページ
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