2012年4月14日土曜日

ダ・ヴィンチの名を冠する展覧会の難しさ

Bunkamura ザ・ミュージアムで開催された、『レオナルド・ダ・ヴィンチ 美の理想』展を見た。

レオナルド・ダ・ヴィンチそのもの、というよりは、彼の後世への影響、ということに焦点を当てた展覧会だった。

ダ・ヴィンチの『ほつれ髪の少女』。他にも、いくつかデッサンの作品が展示されていたが、これが最も確実に彼の作品とされ、この展覧会のポスターなどにも使われていた。会場の中でも、最もいい場所に飾られていた。

作品自体は実に素晴らしい。実に美しい。ひとりの少女が、向かって左下を、穏やかなやや悲しげな表情で、見つめている。

髪の部分は、簡素に描かれているだけで、その表情に焦点が当たっている。陰翳だけで、その少女の内面まで写し取ったような、繊細な筆使いで描かれている。

ダ・ヴィンチの作品であることが確実ではないが、その可能性がある作品として、『岩窟の聖母』と『アイルワースのモナ・リザ』という作品があった。

『岩窟の聖母』は、すでに2つの作品が知られている。もともと作品数の少ないダ・ヴィンチが、1つのテーマで3つの作品を描いたと考えるのは、明らかに不自然だろう。

後者のモナ・リザは、他の作家による模写などといっしょに並べられていた。そうした絵と比べると、確かにその技術は群を抜いているように見えたが、作品全体の雰囲気から、私にはダ・ヴィンチの作品とは思えなかった。

しかし、これほど多くのモナ・リザが並んだ光景はある意味で壮観。いかにこの作品が、後世に大きな影響を与えたということが実感できた。

他には、付き人あるいは弟子のように、いつもダ・ヴィンチの近くにいたサライの作品と考えられる『裸のモナ・リザ』や、ラファエロの工房によると思われる作品が、印象に残った。

しかし、よくよく考えて見ると、この展覧会には、小さなデッサンなどを除けば、ダ・ヴィンチの真作といえるものは、『ほつれ髪の少女』のみ。それで、大々的にダ・ヴィンチの名を冠して開催している。

観客の中には、”騙された。金を返せ。”と思う人もいるのではないだろうか?

Bunkamura ザ・ミュージアムの『レオナルド・ダ・ヴィンチ 美の理想』展特設ページ

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