東京の三菱一号館美術館で開催されていた、ルドンとその周辺−夢見る世紀末、という展覧会を見た。
ルドンは、私が最も好きな画家の一人。リトグラフ、パステル画、油彩画。風景画、人物画・・・とにかく、ルドンの幻想的な世界を満喫できた。
若い頃の作品には、木を描いた作品が多いが、それは、ルドンは晩年のカミーユ・コローから直接受けたアドバイスの影響によるのだという。
石盤画集『夢の中で』に描かれている、ルドンの作品を代表する、幻想的なリトグラフの数々。人の顔が気球になって空を飛んでいたりする。ルドンが、幻想的なイメージとは別に、気球など、当時の最先端の技術にも高い興味を持っていた。
『瞳をとじて』のリトグラフ。オルセー美術館にある油彩画と同じ構図。一人の髪の長い人物の頭部が描かれている。その人物は、静かに瞳を閉じている。他には何も描かれていない。
この人物は、瞳をとじて、その頭の中でどんなことを考えているのか、どんな風景を見ているのだろうか。ルドンの魔術にかけられた私たちは、この絵から、様々なことを想像させられる。
会場の最後に置かれた『グラン・ブーケ』。縦2メートル50センチの大作。ルドンが描く花は、単なる表面的な花ではない。花の持っている怪しく退廃的なエネルギーと、それが周りの空間に及ぼす影響。それらが、ルドンの絵の中で、微妙な陰翳で、表現されている。
ルドンが生き、活躍した時代は、ちょうどそっくり、印象派の時代と重なる。華やかなイメージの印象派と、ルドンに代表される幻想的で象徴的な絵画。19世紀のパリは、さまざまな芸術が花開いた、まさに芸術の都だった。
中でも、モーリス・ドニの『なでしこを持つ若い女』が印象に残っている。淡く、やや暗めのパステルカラーで描かれたその絵の中で、白いなでしこの花を持った女性が、こちらを振り向いていた。
グラン・ブーケの作品を除くと、すべての展示品は、岐阜県美術館の収蔵作品ということだった。寡聞にも、この美術館のことはこれまで知らなかった。改めて、日本には多くの優れた美術館があることを知った。
三菱一号館美術館の展覧会特設サイト
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