2012年2月26日日曜日

絵画の本質を描いた難波田史男


東京オペラシティーアートギャラリーで開催されていた、難波田史男の15年、展を見た。

難波田の作品を、これほど多く一度に目にしたのは初めてだった。彼の絵を見て、改めて、絵画とは何か、絵画において、線、形、色とは、何なのか、ということを考えさせられた。

難波田は、既成の美術教育ではなく、全く独自に絵画を身につけた。その意味で、いわゆるアウトサイダーアーティストとして紹介される。しかし、この展覧会を見た限りでは、難波田はむしろ、絵画芸術の本道をあるいていたように思えた。

インクで書かれた細かい線。輪郭線に捕われず、その存在を主張するかのように自由に置かれる色彩。

難波田は、クレー、ミロ、カンディンスキーらの影響を受けているようにみえる。クレーは、「存在しない物を、あたかも、存在するように描く」というテーゼを主張したが、難波田の絵は、まさにその通りの作品だ。

難波田の作品は水彩画で描かれているものが多い。普段、油絵を見慣れているせいか、水彩画の色の柔らかさは新鮮だった。また、水彩画独特のぼかしを非常に効果的に使っている。

また、彼の作品は”無題”が多いのも特徴だ。全ては、絵の中に描かれている、絵に題名など必要ない、とでも主張しているかのようだ。

『太陽を紡ぐ少女』という作品が印象的だった。一人の少女が、手を大きく広げている。少女は、その指先で、太陽からの光を紡いでいる。

難波田は、32才の時、瀬戸内海のフェリーから転落して亡くなったが、幼い頃から”水”を、生と死の象徴と捉えていたようだ。後期の作品には、海や水を描いた作品が多い。

その15年という短い活動期間の中で、2,000を越える作品を残した難波田史男。この展覧会では、そのうちから、わずか240点が展示されただけだった。

私たちは、未だ、難波田史男という画家の全貌を知らない。

東京オペラシティーアートギャラリーの展覧会のホームページ

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