2012年7月16日月曜日

微妙な構成のベルリン国立美術館展


ベルリン国立美術館、という名前の美術館は存在しない。ベルリンに存在する15の美術館の総称が、ベルリン国立美術館群とされる。

通例として、その15の美術館のどこからか出品された場合、ベルリン国立美術館所属として紹介される。

上野の国立西洋美術館で開催された、「ベルリン国立美術館展 学べるヨーロッパ美術の400年」という、実に野心的な題名の展覧会も、実態は、上記15の美術館のうちの3つの美術館、絵画館、素描版画館、ボーデ美術館からの出展ということのようだ。

その名前からわかる通り、この展覧会は、絵画、彫刻そして素描から構成されていた。

この展覧会の目玉は、フェルメールの「真珠の首飾りの少女」だろう。同じ時期に、同じ上野の東京都美術館で開催されている展覧会では、同じフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」という作品が展示されていて、ややこしい。

作品自体は、勿論、美しい。絵の左端の窓から光が入り、その光が人物を中心とした室内の対象に、様々な陰翳をもたらすという、フェルメールの典型的な絵画だ。

女性の真珠の首飾りはもとより、毛皮たっぷりの洋服、中国磁器など、いかにも裕福な家庭を象徴するものが描かれているが、少女が真珠の首飾りを映している鏡が、実に小さい。これほど裕福な家であれば、もっと大きな鏡を買えるのでは?

この鏡の小ささに、何か意味があるのだろうか?

ティルマン・リーメンシュナイダーの「竜を退治する馬上の聖ゲオルギウス」。ルネサンス期のドイツを代表する彫刻家。日本ではあまり目にする機会がないだけに、貴重な鑑賞の機会となった。

馬に乗って竜を退治する聖ゲオルギウスは、まるでたった今、眠りから覚めたかのような、眠そうな表情をしている。リーメンシュナイダーにとっては、竜を退治するという荒々しい行いにあっても、聖人は、その心の中に、静寂さがなければならない、と考えていたようだ。

デッサンのコーナーでは、ボッティチェリによる、ダンテの神曲の挿絵の素描が2枚展示されていた。その筆の細かさは、まるでミニチュアールや、日本の洛中洛外図のよう。

他にも、デューラー、クラナッハ、ベラスケス、ルーベンス、レンブラント、デッサンでは、ミケランジェロ、ラファエロなど。錚々たる名前が出展リストに並ぶが、全体の構成が、今ひとつの感があった。

ある意味で、玄人向けの展覧会とは言える。”学べるヨーロッパ美術の400年”と銘打ってはいたが、その内容に、やや拍子抜けした人も多かったのではないだろうか?

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