2013年4月2日火曜日

第68回春の院展を見た印象から


日本橋の三越の春の風物詩、春の院展。

300点を超える日本画を、美術館より少しくだけた雰囲気で味わえる。

これだけあると、ゆっくり一点一点を味わうというよりは、ブラブラ廻りながら、途中、目に入った作品の前で立ち止まる、といった感じになる。

ここ何年か通っているが、やはり、同じ様な絵が並んでいるなあ、という印象は拭えない。

何気無い場所を描いた風景画。外国の観光地を描いた風景画。女性を描いた人物画。描かれている人物は、圧倒的に女性が多い。鹿、馬、犬、ネコなどを描いた動物画。草花を細かいタッチで描いたものなど。

どうしても、周囲とは違った絵、インパクトの強い絵に、目が行ってしまう。

高橋天山の木之花佐久夜毘売。雪が積もったように、真っ白に描かれた富士山をバックに、平安絵巻から抜け出たような、着物を着た女性が空に浮かんでいる。木之花佐久夜毘売という神話的な存在よりは、紫式部とか、清少納言のように見えてしまった。

岩永てるみのサン・ラザール駅。モネが描いたことでよく知られた対象を、日本画で描いている。天井だけにフォーカスして、写真のような、写実的な画風で表現している。モネの絵は、ぼかして描かれているのに、岩永の日本画が写実的なのが面白かった。

濱田君江のポンペイ。一人の女性が腰掛けて、こちらをじっと見つめている。ポンペイの滅亡に直面しているのか、遺跡の中にいるのか、よくわからないが、題名と描かれているものがすぐに結びつかず、それが印象に残った。

安井彩子の演奏まえに。文字通り、演奏を直前に控えた一人の若い女性が、サックスを手に座っている。演奏前の静かな緊張感を、自然な筆使いで描いている。現代の何気ない一風景を写した日本画だが、今に生きている日本画ともいえる。

チケットがなくても鑑賞できる、いわゆる場外には、今回、初入選した作品が並んでいた。

その中から、京都絵美のブーケ。若い女性が、ブーケを抱えている。そのブーケは勿論、絵の全体が、明るいパステル色で描かれている。春の雰囲気に相応しい一枚。

初入選の作品が、場外に置かれている、というのは、日本美術院の階級制を表しているようにも見えた。

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